近年にない大雪もおさまり、
2月19日の一斉調査でも大方の個体が確認されたので、
コウノトリたちはなんとか厳冬期を乗り切ったと安堵していました。
甘かった。
その5日後の24日に、J0408(♂)の死亡が確認されました。
まだ死因は特定されていないため、軽々には言えませんが、
体重が3.6kgしかなかったこと(通常、オスの体重は5kg前後)から見て、
餌はほとんど食べていなかったと思われます。
死亡現場は、「ハチゴロウの戸島湿地便り」の写真にあるように、
山とフェンスの狭隘な空間です。
狭いために大型の鳥は羽が広げられず、
脱出できなかったのではないかとの見方もありますが、
私が現場を見た限りでは、元気であれば出られただろうと思いました。
相当に衰弱していたのでしょう。
19日の一斉調査のとき、調査に参加された地元地区のTさんは、
「他の個体は自宅付近で確認しているが、408はこの数日間見たことがない。
18日に確認されているのは本当に408なのか?」と、とても心配されていました。
また、日ごろ熱心に観察されているOさんは、
「どうもかなりの個体が痩せているように見える」と述べられていました。
特に首が細いのだそうです。
この2人の発言から、次のことが言えそうです。
1つは、コウノトリ(野生動物)は、
衰弱すると、人間が見えるような明るい開けたところへは姿を出さなくなるのではないか。
発見されにくい所を死に場所にするのではないかということです。
2つ目は、コウノトリのような大型の鳥は、
徐々に衰弱していくのが分かるのではなく、外見で元気そうに見えても急に死亡する。
3つ目は、だから、人間が「見守る」だとか「衰弱していたら、すぐに救助する」などは、
本来的に不可能ではないか。
そして4つ目。給餌を受けていない多くの個体が痩せているとしたら、
その体自体が弱っているのではないか。
雪が消えて餌生物が見えてきたと言ってもまだわずかです。
本日(3日)はまた雪です。
衰弱しきった体はすぐには回復しないのではないか。
まだまだ予断は許されないでしょう。厳戒態勢はとけません。
で、一体、コウノトリは、厳冬期にどれだけの餌量を食べなければならないのか?
つまり、コウノトリが命を健康に維持できる基礎代謝量はいくらなのかを知らないと、
観察していても餌不足なのか、衰弱しているのか判断困難です。
そこで、2月8日に、文書でコウノトリの郷公園に数値を提示してもらうべくお願いしました。
これが出ると、コウノトリの生息地づくりにとって、大きな判断材料となると期待しています。
豊岡盆地の環境収容力の算出にも武器になるでしょう。
でも当面は、やはり、冬の豊岡、特に豪雪地帯の北部では、給餌が必要だと思うのです。
その一方、
3月1日、岡山県でJ0006(♀)とJ0019(♂)が「ラブラブ関係だわよ」との連絡が入りました。
私たちが、「生息地の全国展開を図るには、いかにネットワークを構築すべきか」などと、
頭をかきむしっている間に、当のコウノトリたちはさっさと行動しています。
これまた、やっぱり野生動物はたくましい。